モネとジヴェルニーの画家たち
クロード・モネ
《積みわら(日没)》
1891年
油彩・キャンヴァス
ボストン美術館
Photography © Museum of Fine Arts, Boston
藁と蓮
2011年1月15日
一昔前、パリのオランジェリー美術館でクロード・モネの巨大な《睡蓮》を鑑賞した時は、特に深い感慨を覚えた記憶はない。
しかし今回は、ある一つの作品が私の心を強く捉えた。それがモネの《積みわら(日没)》である。この絵の、やわらかく、温かみのある色使いが、眺めていて心地良く、ずっと見惚れてしまっている自分に気がつく。
ネイチャー・センス展
篠田太郎
《銀河》
ミクスト・メディア
2010年
80×750(直径)cm
撮影:高山幸三
写真提供:森美術館大振りで大雑把
2010年9月30日
大振りで、大雑把な展覧会である。恐竜の化石のように、一つ一つの作品が巨大で存在感があるものの、繊細さに欠けるという印象だ。これが、隣接する会場で開催されていた恐竜展に影響を受けていた結果だとすれば、それなりに洒落が効いているとも言えるが。
マン・レイ展
《無題(セルフ・ポートレイト)》/1947年/リトグラフ
2010 © Man Ray Trust
展示方法
2010年7月31日
青いハートのモチーフに心引かれ、本展に足を運んだ。
マン・レイは写真、絵画、オブジェ等多岐にわたる分野で活躍したアーティストであり、本展はその彼の作品を日本展だけに出展される約70点を含む約400点を紹介する催しである。マン・レイの生涯をニューヨーク、パリ、ロサンゼルス、パリの四つの時代に分け、時代毎に制作された各作品を作品の発想源となったモノやイメージと対置させる形で紹介している。
ルーシー・リー展
《青釉鉢》1978年頃 東京国立近代美術館 Estate of the artistエレガンス
2010年5月30日
ルーシー・リー。この名前を最初に目にした時、作家は中国の方だろう、と深い考えもなくそう思った。彼女の作品を最初に目にしたのは、渋谷駅内のポスターだったが、シンプルな作りの器の、黄色と青、そして、そのこげ茶色が印象的だった。
六本木クロッシング2010展:芸術は可能か?
照屋勇賢
《告知―森》
2005年
紙袋、糊
18 × 8 × 28 cm
ソロモン・R・グッゲンハイム美術館、ニューヨーク作者のメッセージ
2010年4月30日
「六本木クロッシング」は日本の現代アートの現状を紹介すべく、2004年から3年毎に開催されている展覧会で、今回がその3回目にあたる。キューレーターが各々の視点で、写真、彫刻、映像、インスタレーションなど多様なジャンルの作品を選出し、展示する。今回は、ベテランから若手まで20組のアーティストの作品が選ばれた。
美しき挑発 レンピッカ展
強く、濃い
2010年3月28日
どの作品も強く、濃い。
タマラ・ド・レンピッカは、ハリウッド女優並みの容貌と巧みな自己演出を武器に、1920年代から30年代のパリの社交界、および芸術界にて活躍した画家である。彼女の作品は現在、マドンナをはじめとするハリウッドの著名人がこぞって収集し、有名オークションでも数億円の値がつくこともあるほど世界的に評価が高い。
没後400年 特別展 長谷川等伯
400年の時を超えて
2010年2月27日
時は桃山時代。当時、狩野永徳を頂点とする狩野派が画壇に君臨する中で、その存在を脅かした絵師こそが、長谷川等伯である。
今回の展覧会は、その等伯の作品の内、国宝3件、重要文化財約30件、重要美術品1件を含めた約80件の作品を一挙に公開する催しであり、今年2010年は等伯の没後400年にあたる節目の年でもある。
ボルゲーゼ美術館展
サンドロ・ボッティチェリ(本名:アレッサンドロ・フィリペーピ)とその弟子たち《聖母子、洗礼者ヨハネと天使》1488年頃
華麗なるコレクション
2010年1月29日
ボルゲーゼ美術館は、ローマ北東部に位置し、名門貴族であるボルゲーゼ出身で、ローマ教皇の甥でもあったシピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿により、彼自身の夏の離宮兼芸術コレクションを収集展示する館として、17世紀初めに建てられた。そこでは、数々の古代彫刻とともに、ルネサンスからバロックにかけての彫刻・絵画が展示され、その中でも特に枢機卿が好んだというベルニーニとカラヴァッジョの作品は点数が多く、当館のコレクションの核をなしている。
木村伊兵衛とアンリ・カルティエ=ブレッソン - 東洋と西洋のまなざし -
木村伊兵衛
「パリ、地下鉄入口」1955年
似ているもの、似ていないもの
2009年12月27日
木村伊兵衛とアンリ・カルティエ=ブレッソンの写真は似ている。そして、似ていない。
二人は共にライカというカメラを使い、写真を生み出す。そこに写し出される像は現実であり、自然だ。人々は、中には例外はあるものの、カメラの前で特別にポーズをとることもなく、それが故に写真を撮られる者、写真を撮る者、そしてその写真を見る者の間の距離を感じさせない。二人の写真を見るとき、あたかも自身がその場にいて、実際にその情景を彼らと共に経験しているかのような錯覚すら覚えてくる。
ロートレック・コネクション
トゥールーズ=ロートレック美術館 images of Donatien Rousseau, Musee Toulouse-Lautrec,Albi-Tarn-France
目
2009年11月29日
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックは、19世紀末のパリ、モンマルトルを舞台に創作活動を行った画家である。36年という短い生涯の中で、ベルナール、ドガ、マネ、シェレ、スタンラン等、数多くの画家達と交流を重ね、独自の作風を確立したと言われている。コネクションというタイトルが示すとおり、本展覧会ではロートレックの作品を中心に、彼と交遊があった諸作家の作品も同時に鑑賞することができる。
アイ・ウェイウェイ展 - 何に因って?
《シャンデリア》
2009年
クリスタルガラス、電球、金属
600×450×225cm
森美術館「アイ・ウェイウェイ展-何に因って?」展示風景
2009年7月25日~11月8日
撮影:渡邉 修
写真提供:森美術館
アートとは
2009年8月30日
アイ・ウェイウェイは現代中国を代表するクリエイターであり、その活動範囲は美術、建築、デザイン、出版、展覧会企画等多岐に渡る。彼は、2008年北京オリンピック・スタジアム「鳥の巣」のヘルツォーク&ムーロンとのコラボレーション等の活動により、自身の国際的評価を確立した。本展覧会は、新作6点を含む1990年代以降の主要作品26点を紹介する個展である。立体作品、写真、ビデオ、インスタレーション等、アイ・ウェイウェイの多様な創造活動を鑑賞することができる。
万華鏡の視覚 - ティッセン・ボルネミッサ現代美術財団コレクションより
「万華鏡の視覚:ティッセン・ボルネミッサ現代美術財団コレクションより」 展示風景
森美術館 撮影: 渡邉 修 写真提供: 森美術館異なる視点
2009年6月30日
本展覧会は、優れた現代美術の所蔵で名高いティッセン・ボルネミッサ現代美術財団コレクションと森美術館とが共催す企画展である。ジャネット・カーディフ、オラファー・エリアソン、マシュー・リッチー、スゥ・ドーホーなど世界的に活躍するアーティストの主要作品をダイナミックなインスタレーションを中心に楽しむことができる。
「混浴温泉世界」別府現代芸術フェスティバル2009
マイケルリン別府国際観光港関西汽船のりば 2F、撮影:橋本誠6月29日
湯けむり、混在する聖と俗、移民文化。別府は、いたるところに不思議が顔をのぞかせる魔術的な港町です。その街で、多様な現代アートが展開します。鑑賞者はパスポートと地図を片手に、点在したアート作品を探していきます。そしてその途上で、別府という街が垣間見せる、さまざまな表情と出会うことになるのです。
ネオテニー・ジャパン - 高橋コレクション
日本現代アートの縮図
2009年6月7日
本展覧会は、日本屈指の現代アートコレクターである高橋龍太郎氏私蔵の1000点以上に及ぶコレクションの中から、厳選した97点を展示する企画展である。村上隆、奈良美智、会田誠、小沢剛、加藤美佳、鴻池朋子、束芋、名和晃平など、錚々たるアーティストの作品が一同に会しており、過去10年の日本の現代アートシーンを語る上で欠かせないものに仕上がっている。
アート アワード トーキョー 丸の内 2009
日本的
2009年5月24日
アートアワードトーキョーは若手アーティストの発掘・育成を目的とした現代アートの展覧会である。全国の美術・芸術大学の卒業制作展から選抜した約50点の作品を行幸地下ギャラリーにて約1ヶ月一般無料公開する。行幸地下ギャラリーとは、東京駅地下にある全長220mにおよぶ公共空間を活用したガラスショーケース型の展示スペースだ。
横浜開港アンデパンダン展
アンデパンダン
2009年5月3日
アンデパンダンとは、フランス語で自主独立という意味らしい。19世紀末、自由な芸術創作活を目的として印象派の画家達が官展に反対して無鑑査の展覧会を開催したのがアンデパンダンの始まりと言われている。日本でも大正始めに初めてこの形式の展覧会が開催されたそうだ。
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©2008 ryoji ikeda
Photo: Liz Hingley [参考図版]
マトリックスとモノリス
2009年4月26日
会場内に入ると、まず金属製の長方体が目に入る。その上部には極小サイズの数字がびっしりと刻み込まれている。数字はあまりに小さく、顔を近づけ目を凝らさなければ見逃すほどだ。作曲家兼アーティストの池田亮司はいかにしてこの極小サイズの数字を整然と金属上に刻み込むことが出来たのだろうか。どこかしらシリコンウェハーにコンピューターの基盤図を微細に刻み込む作業を連想させる出来栄えだ。
六本木アートナイト
一夜限りのアートイベント
2009年4月5日
六本木ヒルズ、サントリー美術館のある東京ミッドタウン、国立新美術館、および六本木商店街振興組合が共同で開催した一夜だけのアートイベント、それが六本木アートナイトである。六本木各所にアート作品が展示され、通りを行きかう人、その場所を訪れた人が気軽にアートを楽しむことができた。
名画と出会う 印象派から抽象絵画まで
ザオ・ウーキー
2009年3月29日
ピカソ、モネ、マネ、セザンヌ、マティス、カンディンスキー、ポラック。美術の本を開けば必ず目にするようなアーティストの作品がキラ星のごとく展示されている展覧会、それが今回の「名画と出会う~印象派から抽象絵画まで~」展である。
進芸術X
力あるアート
2009年3月22日
アートに対する私なりの価値判断の基準を述べるとすれば、それはその作品がどれだけ人を惹きつける力があるかどうか、ということになる。一瞬にして人を引きつける力、引きつけた注目を持続させる力、さらには「これは一体何だろう」と見る人の心を動かす力、そんな力を持ったアート作品を私は価値があると考えている。多摩美術大学美術学部の2009年卒業展である「進芸術」に出展された数多くの作品のうち、特に私の心を強く捉えた一つの作品にはそのような力があった。
ワンダーシード 2009
Buy = Support
2009年3月15日
ワンダーシード2009は、「Buy = Support」(作品を購入し、アーティストを支援しよう)を基本コンセプトにしたアート展示販売会である。若手アーティストを対象に10号以下の作品のみを公募し、石原都知事をはじめとする審査員の審査により選出された作品を展示、販売を行うようだ。作品は、会場であるトーキョーワンダーサイト渋谷にて、さらにはホームページからも購入できる。作品単価は、数千円から数万円代となっており、アートを初めて購入する人にも気軽に購入できるようになっている。
「生活と芸術 - アーツ&クラフツ展」ウィリアム・モリスから民芸まで
思想、実践、伝搬、そして発展
2009年3月8日
アーツ&クラフツ運動とは、簡単に言えば一人の思想家の思想を、別の人間が実践し、その思想が具体的に表現された建築物や生活用品として世に出ると、それが展示会やメディアを通してより広い地域に伝搬され、その思想はやがては国境を越え、各国の実情に合った独自の発展を遂げることになった一連の社会の動きである、と言えるかもしれない。いずれにせよ、本展覧会を通じ、アーツ&クラフツ運動がどのように発生し、発展し、世界各国へ波及したのか、その一連の流れを理解することができる。
ポワレとフォルチュニィ 20世紀モードを変えた男たち
作品と空間の調和
2009年3月1日
今回の展覧会は、財団法人東京都歴史文化財団が発行するART NEWS TOKYO という冊子を通して知ることになった。この冊子内には、モザイク状に装飾された床面とオレンジ色のライトに暖かく背面から照らされたガラス状の壁面の前に展示される2対のドレスが写された写真と共に、本展覧会のことが紹介されている。
加山又造展
既視感
2009年2月22日
多くの他の展覧会と同様、他の美術館でたまたま見つけたチラシから本展覧会のことを知った。そのチラシには、大胆な構図と鮮やかな色彩で描かれた迫力ある絵が載せられており、その下に加山又造の名前があった。展覧会に実際に足を運び、その作品が「春秋波濤」(1966年作)であることがわかった。
第12回文化庁メディア芸術祭
アートが与える感動と、そのために必要な時間と手間
2009年2月15日
本展覧会は、文化庁主催の複合的展覧会である。主催者発表によれば、今回の展覧会には2000以上の応募があり、そのうち500作品以上が40を超える世界中の国々からの応募であるという。展覧会は、アート、エンターテインメント、マンガ、アニメーションの4部門に分かれ、それぞれの部門で優秀な作品を展示している。本欄では、特にアート部門に的を絞って展覧会の様子をお伝えする。
ジム ランビー:アンノウン プレジャーズ
空間演出家:ジム ランビー
2009年2月8日
美術館の中に入ると、床一面に敷き詰められた白と黒の虹模様がまず目に飛び込んでくる。青海波文様を、ランダムに、そこかしこに敷き詰めたような感じだ。美術館の受付の女性によれば、ジム ランビーは、美術館を訪れた際、建物が曲線的に建てられていることを確認し、今回は曲線の虹文様をテーピングにて敷き詰めることを決めたという。
束芋:ハウス
束芋ワールド
2009年2月1日
会場は銀座にあるギャラリー小柳。エレベーターを出るとまず展覧会のサインが目に入る。ギャラリー内の照明は抑え気味だ。白い壁面には黒と金の重厚な額縁に収められたスケッチが壁一面に展示されている。描かれている主題は手だ。手に蛸の足が絡みついたり、手の皮膚がめくりあがり、その下の血管や筋組織があらわになった姿が、強く迷いのない線で描かれている。
Daido Moriyama:HOKKAIDO
両親の青春時代
2009年1月25日
森山大道については一度このサイトに書いたことがある。「森山大道 ミゲル・リオ=ブランコ写真展」の時だ。そのことが頭に浮かび、もう一度彼の写真を見てみようと思い今回の写真展に足を運んだ。
前回の展覧会と同じく彼の写真は全て白黒で撮られている。例えば、アラン・ドロンをモデルにした紳士服の看板の下でポーズを取る若い男性。そこには最近ではあまり目にする事のないセールス文句が書かれてある。通りを並んで歩く二人の女性の姿を写した写真。その彼女たちの細い眉と濃い口紅、そして白いファンデーション...
浜口陽三と元田久治、小野耕石、杢谷圭章
月下の夜の砂漠
2009年1月18日
展示会を紹介するチラシ上に載せられた一枚の絵の微細な表現に目を引かれ、本物の絵を見たいと思い本展示会に足を運んだ。展示会場でその絵が元田久治により描かれた版画であることがわかった。東京のいろいろなランドマーク、たとえば東京駅、国会議事堂、 東京タワーなど、 廃墟風に描くことが彼の作風のようだ。
森山大道 ミゲル・リオ=ブランコ写真展
点と線
2009年1月18日
この展示会は日本人である森山大道がブラジルのサンパウロの街を撮り、ブラジル人であるミゲル・リオ=ブランコが東京の街を撮る写真展である。森山の写真はすべて白黒であり、それらは白い壁面に整然と、ある種連続するフィルム写真のように展示されている。一方、ミゲルの写真はすべてカラーであり、それらは赤や緑に色づけされた壁面に展示されている。ミゲルの写真は、それぞれの写真のフレームを相互に重ね合わせたり並べたりすることでいろいろな形を作っている。