ルーシー・リー展
2010年4月28日~2010年6月21日
国立新美術館
エレガンス
2010年5月30日
ルーシー・リー。この名前を最初に目にした時、作家は中国の方だろうと深い考えもなくそう思った。彼女の作品を最初に目にしたのは、渋谷駅内のポスターだったが、シンプルな作りの器の黄色と青、そして、そのこげ茶色が印象的だった。
実際に展覧会に足を運び、ルーシー・リーその人と思われる女性の、その西洋人風の風貌を目の当たりにした後も、相も変わらず作家は中国人と西洋人のハーフかな?と恥ずかしげもなく考えていた。
現実には、ルーシー・リーは20世紀の始めにオーストリアに生まれた陶芸家であり、1938年以来ロンドンを主な活動拠点にしたイギリスを代表する陶芸家である。展覧会会場でこの情報を目にした時、私は二重の意味で驚いた。一つは、ややしこつくなるが、彼女が中国とは全く関わりがなかったこと。もう一つは、彼女が20世紀始めに生を受けていたという事実である。
渋谷駅で彼女の作品を最初に目にした時、その作風から彼女のことを陶芸を現代風に解釈したアーティストであると勝手に想像していた。私自身は、陶芸に対して深い造詣があるわけでは全くないが、彼女の作品からは、私が陶芸に対して持っている悪く言えばどこか古臭い雰囲気を全く感じなかった。
彼女の作品の特徴を一言で表現するとすれば、「エレガンス」という言葉になるだろう。ミニマルでありながら、いたずらに簡素でありすぎない彼女の器の数々は優美な貴婦人のように気品に満ち、美しい。
どの器も美しいものばかりだが、特に印象に残った器を敢えて数点あげるとすれば、《線文円筒花器(朱)》、《線文円筒花器(ブロンズ)》、《青釉鉢》、《スパイラル文花器》、《青線文鉢》等になる。
惜しむらくは、これらの美しい器の数々を実際に手に触れることができれば、より深くその価値を理解することができたであろうと思われることだ。ただ、回顧展という展覧会の性質上、これは無理な相談であるかもしれない。にもかかわらず、彼女の器にはそう思わせる強い魅力に満ち溢れていた。
この展覧会の詳細は下記まで。
http://www.lucie-rie.jp
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