JimLambieUnknowPleasures of Tokyo Art World JP




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ジム ランビー:アンノウン プレジャーズ


2008年12月13日~2009年3月29日
原美術館


空間演出家:ジム ランビー

2009年2月8日

美術館の中に入ると、床一面に敷き詰められた白と黒の虹模様がまず目に飛び込んでくる。青海波文様を、ランダムに、そこかしこに敷き詰めたような感じだ。美術館の受付の女性によれば、ジム ランビーは、美術館を訪れた際、建物が曲線的に建てられていることを確認し、今回は曲線の虹文様をテーピングにて敷き詰めることを決めたという。

一方、今回の展覧会を紹介する配布物には、一部稲妻のように鋭角に角度付けられている部分もあるものの、七色の直線がテーピングにより施されている様子が見て取れる。配布物の写真は彼がイギリスのグラスゴーで展覧会を行った時のものらしい。配布物によれば、ジム ランビーは「床一面に規則正しくテーピングを施すことで生まれる幾何学的パターンによって空間を大胆に変容させ、抽象による豊かな視覚体験の創出とその可能性を追究している」という。

私が本美術館を訪れるのは今回が初めてであるため、ジムランビーにより原美術館という空間が具体的にどのように変容したのかは残念ながら把握できない。しかし、白黒虹文様のテーピングにより、「豊かな視覚体験」が創出されている、ことは確かだろう。受付の女性によれば、今回のテーピング作業には5日ほどかかったらしい。(ちなみに、その他の作品設置のために 7日ほど別に時間が必要だったとも伺っている。)

さて、受付のすぐ奥には最初の部屋があり、その床面も同じく白黒の虹模様に一面覆われている。床には、コンクリート製の立方体が一部床に埋め込まれているように見える形で展示されている。その物体には、レコード・ジャケットが多数並べて埋め込まれている。ちょうどこの物体がレコードを保管する箱であるかのように。レコード・ジャケットはしっかりとコンクリートに埋め込まれ、分離はできないようだ。レコードジャケットは単純に相互に並べて埋め込まれているものもあれば、重ねあわされた部分の断面がアルファベットのN字型、あるいはM字型に見えるように埋め込まれているものもある。

上を見上げると、鏡と金属製のバーで作られた物体が展示されている。壁面の作品説明を読むと、鏡とバーにより宇宙の星座を表現している作品であることがわかる。床面の白黒虹模様がこの作品の鏡に映しだされる様子を見ていると面白い。鏡によってはその中央部が少し膨らんだ形になっているものもあり、そこに映し出された白黒虹模様も床面のそれとは若干違った感じ見えるため、床面をみて、鏡を見、また床面を見ることを繰り返しているうちにだんだんと混乱してくるようだ。

この部屋を出て右奥に進むと右手に階段があり2階に上がることができる。一方、右さらに奥には左前方に湾曲した回廊が続き、回廊を進むとすぐ右手に入り口があり、そこには先ほどの部屋より大きな部屋がある。もちろんこの部屋も、歩いてきた回廊と同様、床一面に白黒虹模様のテーピングが施されている。部屋中央には、分解された木製の椅子の部分部分を相互に重ね、組み合わせることで新たに創り上げられた作品が展示されている。椅子は様々な色に塗装され、とてもカラフルだ。この作品のそこかしこにはハンドバックが幾つか吊り下げされており、それらのハンドバックの表面には割れた鏡がモザイク状に貼り付けられている。

この部屋を出て、回廊を受付方向に戻り、2階へと続く階段を上がる。と、左手の白い壁面にペンキが多数付着し、汚れていることに気づいた。下を見ると、もちろんこの階段部分もこれまで同様白黒虹模様のテーピングが施されているわけだが、左隅部分に小さなペンキだまりが見つかる。上を見ると、エンジ色のペンキにより着色されたベットのマットレスが壁面に取り付けられており、そのペンキが壁面を伝わり、階段にまでたれ落ちているわけだ。どうやらこのベットも作品の一部らしい。

階段を上ると、右奥に回廊が続いており、計3つの部屋にてジムランビーが創り出した空間を楽しむことができる。全ての部屋では1階の部屋同様、床面の白黒虹模様のテーピングとコンクリートの立方体を観察することができる。一番手前の部屋に入ると、左手に赤い扉がある。そのドアには複数の様々な形をしたノブが取りつけられ、扉はわずかに開いた状態だ。扉の奥に何があるのだろうと思い近づくと、そこで目にするものはまたもや白黒虹模様だ。ちょうど扉の端が描く仮想の放物線状の湾曲面に、通常はもちろんこの曲面は目に見えないわけだが、その曲面があたかも存在するかのように白黒の虹模様のテーピングが施されている。もしやと思って扉の近くでジャンプして扉の上に有るはずの空間を覗いてみると、その部分にも白黒の虹模様のテーピングが施されていた。この部屋には扉以外にもうひとつの作品が展示されている。歌手らしき人物の写真ポスターの上から油絵具により花模様を描いたコラージュ作品である。

次の部屋は、最初の部屋より若干広いが、展示されているものは最初の部屋とほぼ同じだ。扉は黄色になり、扉はより大きく開いたままになっており、その湾曲面にも扉の上部にも最初の部屋と同じく白黒虹模様のテーピングが施されている。3番目の部屋が一番広い。ただし、空間構成は基本的に最初の二部屋と同じであり、扉の色は水色になっている。

以上が本展覧会の概要だが、今回一番印象に残ったことは、受付の女性から伺った、「ジム ランビーが実際に当美術館に訪れ、建物が曲線的に建てられていることを確認した上で、曲線の白黒虹文様を敷き詰めることに決めた」という情報である。なぜジム・ランビーは、今回グラスゴーでの展覧会と同様、七色の直線によるテーピングにて空間を創造するという選択を取らずに、曲線、そして白と黒の2色のみでテーピングを行ったのだろうか。その答えは彼自身にインタビューしてみなければ正しい答えは出てこないだろう。しかし、この事実及び本展覧会に展示されたいくつかの作品、そしてそこから受け取れる印象などを考慮すると、もしかするとジムランビーは空間演出家と呼ぶにふさわしい存在なのかもしれない。そんな感想を抱いた。

この展覧会の詳細は下記まで。

http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html



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