KayamaMatazoRetrospective of Tokyo Art World JP




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加山又造展


2009年1月21日~2009年3月2日
国立新美術館


既視感

2009年2月22日

多くの他の展覧会と同様、他の美術館でたまたま見つけたチラシから本展覧会のことを知った。そのチラシには、大胆な構図と鮮やかな色彩で描かれた迫力ある絵が載せられており、その下に加山又造の名前があった。展覧会に実際に足を運び、その作品が「春秋波濤」(1966年作)であることがわかった。

その「春秋波濤」を実際に目の前にした時の感想といえば、不思議なことにチラシを見たときに感じた感動から比べると、幾分落ち着いたものであると言えた。本展覧会を通して感じたこと、それは一言でいえば既視感ということになるだろうか。一美術愛好家の私から見れば、加山の作品はどれも確かな技巧に裏付けられた見事なものばかりである。しかしながら、そうであるが故になおさら、「この絵ってなんかどこかで見たような気がするな。。」という印象を持っている自分に気がつくことになる。

これはもしかしたら、「回顧展」というこの展覧会の企画構成に原因があるのかもしれない。本展覧会は1927年から2004年までの加山又造の生涯にわたる創作の軌跡を紹介するものである。展覧会は全部で六章に分かれ、それぞれが個別テーマに則した作品を紹介している。一章から六章まで順番に見ていくと、各章がそれぞれ全く別々の作家によって描かれたのでは、と私には思えるくらい作風が異なって見えるのである。同じような感想を、以前ピカソ展を観覧した際にも抱いたことを思い出した。

唯一、五章の水墨画の諸作品を閲覧した際には、先に述べたような既視感をそれほど強くは感じなかった。もちろんこれは、単に私がこれまで水墨画に深く接していないためであるかもしれない。いずれにせよ、特に作品番号63および64にはしばらく目を引き付けられた。どちらも、ごつごつとした岩と枯れて尖った木々を表現した水墨画の作品であるが、まるで亡くなった人間の魂の燐粉というべきものがそれらの木の枝の表面に撒き散らされたとでも言うかのように、木の枝の表面が蛍光色を発しているように見えるのである。その様は、寒々と描かれた岩の様子と相まって、絵全体が死後の黄泉の世界ともいうべき空間をを表現しているかのようでもある。

本展覧会では、ファイン・アートとしての加山の作品以外にも、版画や陶器、着物、宝石のデザインにおける彼の作品も閲覧することが出来る。加山の多彩な芸術活動の一端を示すものと言えるだろう。

この展覧会の詳細は下記まで。

http://www.kayamaten.jp/


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