Daido Moriyama HOKKAIDO
2008年12月19日~2009年2月8日
RAT HOLE GALLERY
両親の青春時代
2009年1月25日
森山大道については一度このサイトに書いたことがある。「森山大道 ミゲル・リオ=ブランコ写真展」の時だ。そのことが頭に浮かび、もう一度彼の写真を見てみようと思い今回の写真展に足を運んだ。
前回の展覧会と同じく彼の写真は全て白黒で撮られている。例えば、アラン・ドロンをモデルにした紳士服の看板の下でポーズを取る若い男性。そこには最近ではあまり目にする事のないセールス文句が書かれてある。通りを並んで歩く二人の女性の姿を写した写真。その彼女たちの細い眉と濃い口紅、そして白いファンデーション。双子かなと思わせるような似たようなメイクだ。舗装もままならない砂利道と木造作りの寂れた家。そして、そんな周囲の雰囲気には場違いの、肩の張った制服のような服を着て通りを歩く女性の姿。電車の中で疲れた感じで眠る乗客と、彼らが座る硬そうで、リクライニングの利かない垂直に作られた座席。長いフレア調のワン・ピースを着て駅のプラットフォームで電車を待つ女性の黒く長い髪など。
今回の写真は全て北海道の情景らしい。しかし、仮にこの写真展が"HOKKAIDO"と名づけられていなかったとしたら、そうとはわからないだろう。私はまだ北海道に行ったことがない。また、自分自身がここに写し出された人々と同時代を生きてきたとも思えない。にもかかわらず、彼の写真を見ているとなぜか懐かしさを感じてしまう。どうしてなのだろうと彼の写真を見ることもなく見ながらしばらく考えていると、そこに写し出された様子が、私が子供の頃に見た私の両親の青春時代の写真に写し出された情景と雰囲気が似ているためではないだろうかという思いに至った。
果たして、森山によって時間と空間をそれぞれの写真の中に記録された人達は、私の両親と同時代に生き、同じような青春時代を送り、それぞれの人生を現在まで歩んできたのだろうか。今回の写真展を見て、ふとそんな思いにさせられた。
この展示会の詳細は下記まで。
http://www.ratholegallery.com/jp.html