吉岡徳仁
《スノー》
フェザー
2010年(1997年~)
600x1400x500cm篠田太郎
《銀河》
ミクスト・メディア
2010年
80×750(直径)cm
撮影:高山幸三
写真提供:森美術館栗林 隆
《インゼルン 2010(島々2010)》 部分
2010年
黒土、鹿沼土、植物、アクリル
約400x750x1000cm
撮影:渡邉 修
写真提供:森美術館
ネイチャー・センス展
2010年7月24日~2010年11月7日
森美術館
大振りで大雑把
2010年9月30日
大振りで、大雑把な展覧会である。恐竜の化石のように、一つ一つの作品が巨大で存在感があるものの、繊細さに欠けるという印象だ。これが、隣接する会場で開催されていた恐竜展に影響を受けていた結果だとすれば、それなりに洒落が効いているとも言えるが。
今回の展覧会は、そのタイトルから判断する限り、アート作品を通じて自然、もしくは自然観、自然感を認識するということであろう。にも関わらず、展示された作品に何らその自然らしきものが感じられないのは滑稽ですらある。例えば吉岡徳仁の《スノー》と題される作品がある。ブロントサウルスのごとく巨大で透明なケースの中に羽毛が敷き詰められ、時折それが扇風機の作り出す風によって巻上げれ、中空を舞うというただそれだけの作品である。羽毛が持つ質感、色、風に吹かれて宙を舞う様があたかも空を舞う雪のごとくある、しからばこの作品は《スノー》と命名すべし。この作品の背景は大方こんなところだろうと予想するが、あるいは私には到底窺い知ることのできない深い思想がこの作品の背後には隠されているのかもしれない。
いずれにせよ、自然を謡う以上、扇風機の存在はいかにも不適当ではないか?人工の器物により人工的な風を起こし、雪に模した羽毛を舞い上がらせる。三文芝居の舞台背景装置としてはなかなかよくできたものに成り得るだろうが、これを現代アートであると強弁するのは無理がある。吉岡徳仁といえばパイ生地のような格好をした椅子をデザインしてヨーロッパのどこか著名な賞を獲得し名声を得たと記憶しているが、今回展示されているような安直な作品を作っているところをみると早晩その名声には陰りが生ずるのでは、と余計な心配をしてしまう。その他本展覧会では、ミョウバンの親玉みたいな作品、でっかい砂山の塊みたいなもの、大きな紙に虫食い穴をそこかしこに拵えモグラ気分が味わえる作品等を鑑賞することができるが、これと言って特記すべきものはない。
こう書いてみると散々な展覧会のように思え、訪ね行く価値など無いようにも思えるが安心していい。読者は、この「ネイチャー・センス展」ではなく、同時開催されているMANプロジェクト012にて紹介されているトロマラマの作品を楽しむと良い。それは《戦いの狼》と題されたミュージック・ビデオであるが、この作品が通常のビデオと異なるところは、それが木製版画で作成されていると言う点である。その数402枚。ロック・バンドの演奏シーンが木版一枚一枚に刻まれ、それをコマ撮りし、アニメーションのごとく一つの動画に仕立て、そこに音楽を組み合わせると、はい出来上がり。
正直に言えば、この木版アニメーションと、スピーカーから聞こえる音楽とが完璧に一致しているとは思われない箇所が無いわけでもなく、またシーンによってはもう少し手間隙かけて掘り込んだほうがいいと思える箇所もあったが、なによりもまず木製版画でミュージック・ビデオを作るというその発想が面白く、新しい。なにはともあれ、この作品を鑑賞していると、ふとバリ島の影絵作品を思い起こした。木版版画が持つその素材感がそうさせたのか、あるいは作者がインドネシア出身であるとの説明がそうさせたのか、今となってはわからないが。
この展覧会の詳細は下記まで。
http://www.mori.art.museum/jp/index.html
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