theinfinitebetween0and1 of Tokyo Art World JP




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ryoji ikedaa prime number, 2008. photo by marc domage. © ryoji ikeda [参考図版]01.jpgdata.tron [8k enhanced version] ©2008 ryoji ikeda Photo: Liz Hingley [参考図版] 03.jpgdata.film ©2008 ryoji ikeda 写真:福永一夫 写真提供:山口情報芸術センター[YCAM] [参考図版]

池田亮司 +/- [the infinite between 0 and 1]


2009年4月2日~2009年6月21日
東京都現代美術館

マトリックスとモノリス

2009年4月26日

会場内に入ると、まず金属製の長方体が目に入る。その上部には極小サイズの数字がびっしりと刻み込まれている。数字はあまりに小さく、顔を近づけ目を凝らさなければ見逃すほどだ。作曲家兼アーティストの池田亮司はいかにしてこの極小サイズの数字を整然と金属上に刻み込むことが出来たのだろうか。どこかしらシリコンウェハーにコンピューターの基盤図を微細に刻み込む作業を連想させる出来栄えだ。

最初の部屋から奥に入ると、十個のプロジェクターにより壁面に投影された映像が見える。時折聞こえてくる鈴のような音と共にそれらの映像は規則的な動きを繰り返す。その左奥には別の大きな壁面があり、三つのプロジェクターにより投影される映像を並列させることで一つの巨大な映像が映し出されている。

当初、十の映像と一つの大映像はそれぞれ個別の主題を壁面に投影していたが、突然その全てがパソコンのバグ画面のような同じ映像に変化した。そして現われたのが、滝のように流れ落ちる無数の数字の羅列である。その光景はまさに映画マトリックスを連想させる。この映像はそれ自体とても印象的だが、この映像を見入いる人の影がこの映像上に投影されることにより別の印象を醸し出す。これは私だけ感想ではないらしく、展覧会のチラシにはこの作品上に人の影が投影された写真が載せられている。

暗闇の中で光による視覚効果を狙った作品が展示されている一階が黒の部屋だとしたら、地下は白一色の白い部屋である。天井から壁面から柱から床まで白で覆いつくされている。床には断熱材のような白い素材を用いたシートが敷き詰められており、この部屋に入る時はスリッパに履き替えることを求められた。おそらく靴の汚れにより白い床面が黒ずむのを防ぐためだろう。壁面には白いボードが一枚、黒いボードが十枚掲げられており、これらのボードにも無数の数字が刻み込まれている。展覧会関係者の話によれば、白いボードにはネイピア数という数字が、黒いボードにはランダム数がプリントされているそうである。

その奥には不思議な物体が展示されていた。五つの黒い大きなパラボナアンテナである。それらのアンテナは聞いていると次第に頭が痛くなってくるようなピーンという超高周波の音を絶えず発している。なにやら宇宙的な音だ。アンテナの先端に体を近づけるとその高周波音が微妙に変化する。昔、エイリアンという映画の中でどこからともなく突然襲ってくる危険なエイリアンを探知するための携帯用高周波振動装置のようなものが出てきたと思うが、このアンテナも同じような原理から作られているのだろうか。

白い空間に超然と置かれているこれらの奇妙な黒いアンテナを見ていると、ふと映画「2001年宇宙の旅」に登場するモノリスを思い出した。この頭の痛くなるような超高周波音を聞いていると、次第にどこからともなくあのモノリスが忽然と姿を現すのではないかという錯覚にさえ陥る。池田亮司により作り出されたこの空間にはキューブリックがあの映画で表現した世界と確かな共通性があるように私には思える。それは、一階に展示されている映像作品が映画マトリックスを連想させるのと同じだ。

池田亮司とマトリックスとモノリス。アートと映画はどうやら密接な関係にあるらしい。

この展覧会の詳細は下記まで。

http://www.ryojiikeda.mot-art-museum.jp/



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