MoriyamaMiguel of Tokyo Art World JP




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森山大道 ミゲル・リオ=ブランコ写真展


2008年10月22日~2009年1月12日
東京都現代美術館


展評:点と線 

2009年1月18日

この展示会は日本人である森山大道がブラジルのサンパウロの街を撮り、ブラジル人であるミゲル・リオ=ブランコが東京の街を撮る写真展である。森山の写真はすべて白黒であり、それらは白い壁面に整然と、ある種連続するフィルム写真のように展示されている。一方、ミゲルの写真はすべてカラーであり、それらは赤や緑に色づけされた壁面に展示されている。ミゲルの写真は、それぞれの写真のフレームを相互に重ね合わせたり並べたりすることでいろいろな形を作っている。

ミゲルの写真は強い色彩が目につく。日本の写真家である蜷川実花作品を連想させるような原色使いの写真だ。レンズを向けるその独特な視点が面白い。通常の日本人にとってはどうでもいいような、普段はまったく気にも留めないようなものに注目し写真を撮る。一例を挙げれば、乾燥した魚のひれ、 侍の鎧の胴体部分の模様、公園かどこかの銀色の金属製の手すりのへこみ、よじれた木の枝などである。一つ一つの写真の強い色使い、その視点の面白さから次々に写真に注意が向けさせられる。写真一枚一枚が独立した絵画作品のような印象を受ける。

しかしながら、東京の街に実際に生活する一人に人間として彼の写真を見た場合、果たしてこれが東京の街だろうかという思いを感じることは否定できない。彼が撮る対象は別に東京の街でなくてもいいのではないか、そんな感想を抱いてしまう。彼が注目する対象は一つ一つ独特で確かに面白いし、目新しくさえある。しかし、彼の作品からは東京のにおい、息吹、熱、エネルギーなどは感じられない。もしかしたらミゲル自身、東京という街に特段に強い思いはないのかもしれない。

一方、森山の作品は一見したところどれも同じような写真に見えてしまい、正直インパクトに欠けるな、と感じている自分は否定できない。もちろん一枚一枚の写真から、通りに打ち捨てられたゴミ、崩れかけの古い建物、通りを行き交いまたたむろする大勢の人間、露出気味の肌、厚みのある肉体、むき出しの歯、乞食など、ブラジルの風俗を垣間見ることはできる。

こうした一連の写真の流れを順々に目で追っていくうちに、しかしながら、次第に森山の撮るサンパウロの世界に引き込まれている自分に気がつく。一点、一点の写真には特段強い印象を受けないが、それらを連続して見ていくうちに点と点がつながり、一本の線が出来上がる、そんな印象だ。出来上がった線からは、サンパウロの猥雑さ、汚さ、動物的なエネルギーを感じることができる。人の声が聞こえ、ドラムの音が鳴り響き、雑踏を行き交う大勢の人間の足音が聞こえてくる、そんな写真である。

この展示会の詳細については下記を参照のこと。

http://www.mot-art-museum.jp/kikaku/120/



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