SelectionsFromCollection of Tokyo Art World JP




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名画と出会う 印象派から抽象絵画まで


2009年1月24日~2009年4月12日
ブリヂストン美術館

ザオ・ウーキー

2009年3月29日

ピカソ、モネ、マネ、セザンヌ、マティス、カンディンスキー、ポラック。美術の本を開けば必ず目にするようなアーティストの作品がキラ星のごとく展示されている展覧会、それが今回の「名画と出会う~印象派から抽象絵画まで~」展である。

本展覧会は四部構成になっており、来場者は印象派から、20世紀美術、抽象絵画、そして日本近代洋画まで、ブリヂストン美術館が所有するコレクション選りすぐりの絵画および彫刻およそ180点ばかりを堪能することができる。(古代エジプト、ギリシャ時代などの彫刻等も鑑賞できるが、これはこれで興味深い作品ばかりであるものの、今一つ本展覧会との関連性がはっきりしないと感じるのは私だけだろうか。)

本展覧会の展示作品の中で、特に印象に残った作品について順に述べていこう。最初の作品は、クロード・モネの「黄昏、ヴェネツィア」である。(1908年頃。油彩・キャンバス)この作品は、淡いオレンジを基本にした柔らかな感じの色彩が美しい。黄昏時の幻想的なヴェネツィアの雰囲気が見事に表現されている。

次はパブロ・ピカソの「腕を組んで座るサルタンバンク」(1923年、油彩・キャンバス)。以前、サントリー美術館、そして国立新美術館で開催されたピカソ展にて数多くのピカソ作品を鑑賞する機会があったが、一部の例外を除き、どの作品もあまり印象に残らなかったことを覚えている。おそらく私は彼の作品があまり好きではないのだろうと、その時は単純にそう思っていた。しかし、今回の展覧会でもピカソの作品は計8点展示されていたが、この作品だけは例外だったようだ。その部屋に入った瞬間、部屋正面中央に掲げられたこの作品に私は注意を惹きつけられた。

この作品では、まず輪郭の線の明確さが目をひく。作品名のとおり、両腕を胸の前で組み、両足を組んで椅子に座る人の姿を表現した作品である。描かれたモデルは、がっしりとした肩をしており、高くまっすぐな鼻梁が印象的である。全体的に、絵というより彫刻を眺めているような印象を受ける。少ない輪郭線で人間の体をしっかりと描写するピカソのデッサン力は見事であり、シンプルだが、だからこそ一層力強さを感じさせる作品である。

以上に述べた二人のアーティストについては、これまでに数多くの人物が表現してきたに違いない。従って、モネおよびピカソの事だけを書くのではあれば、今回のレビューにはそれほど大きな意味はないだろう。今回の展覧会について読者に伝えたいと特に感じさせてくれた作品が、最後に紹介するザオ・ウーキーの「07.06.85」である。(1985年。油彩・カンバス)。キャンバスに大きく広がる濃い青、薄い青、白、灰色、その他の色。特定の形があるわけではなく、一見すると何を表現しているのか見当もつかないような、まさに抽象画の見本のような作品である。しかしこの作品にこそ私は一瞬で目を引きつけられ、しばらく目を離すことができなかった。それだけではなく、じっと見つめていると何かが出てきそうな気さえした。(この「07.06.85」については、より詳しくCREATIONにて表現しているので併せて確認頂ければ幸いである。)

ブリヂストン美術館内には、こじんまりとした情報コーナーがあり、過去この美術館で開催された展覧会のカタログなどが閲覧できる。2004年のザオ・ウーキー展のカタログも確認することができた。カタログによれば、ザオ・ウーキーは裕福な銀行家の息子として生まれ、後に渡仏し大成した中国人アーティストであり、現在も存命のようである。カタログには、おもわず「うーん凄い」と唸ってしまうような彼の作品が多数掲載されている。写真だけではなく、実際にこの目で見てみたいと強く思ったものだ。

今回の展覧会にてザオ・ウーキーというアーティストの作品に接することができたことは本当に幸運だった。これからも同じような出会いを数多く重ねたい。

この展覧会の詳細は下記まで。

http://www.bridgestone-museum.gr.jp/exhibit/index.php?id=74


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