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アートフェア東京#1アートフェア東京#2101Tokyo#3101Tokyo#4丸山友紀#5佐藤雅晴 TRAUM#6現代アートコレクター高橋龍太郎#7

アートフェア東京と101TOKYO


アートフェア東京: 2009年4月2日~2009年4月5日 東京国際フォーラム&東京ビルTOKIA
101TOKYO: 2009年4月2日~2009年4月5日 アキバ・スクエア


「見る」から「買う」へ

2009年4月12日

「今までアートを買うという考えが頭の中になかった。」

多くの日本人にとってアートとは「見る」ものであり、未だ「買う」ものにはなりきれていない。私自身もアート作品を鑑賞することはあっても、それを買ったことはまだない。

そのアートを買う場としてのアートフェアが都内2か所で開催された。アートフェア東京と101TOKYOである。前者が日本画、西洋絵画、骨董品、 現代アートと幅広く扱うのに対し、後者は現代アートに特化したフェアとなっている。参加ギャラリー数は、アートフェア東京が143(内、16ギャラリーが海外からの出展)、101TOKYOが35(内、8ギャラリーが海外からの出展)である。

アートフェア東京にはVIP・プレス対象のオープニング・プレビューに足を運んだが、予想以上に多くの人が来場していたことに驚いた。ちなみに、同フェアには昨年4万人を超える人が来場したそうだが、今年はどうだったのだろうか。一方、101TOKYOには昨年同様約5000人が来場したそうである。客層は両フェアとも若い人および外国人の姿が目立った。

両フェアともに通路の両側に白い壁に囲まれたブースが設けられ、その内部および壁面にアート作品が展示されていた。来場者は両側のブースを眺めながら通路をゆっくりと周回し、時折気になる作品を見かけると足を止めてその作品をゆっくり鑑賞することになる。

美術館の展覧会とアートフェアの一番の違いは、気にいった作品が見つかればそれを購入するかどうか自分の懐具合と作品の値段とを見比べつつあれこれと悩む楽しみがあるということであろう。といっても、通常の商品とは異なりアート作品の場合はその価格が目立つように表示されることはほとんどない。値段ではなく作品そのものをじっくり見てくださいよ、ということなのだろう。

アートフェア東京については、色んな作品が所狭しと置いてあるなという印象を抱いた(写真1,2参照)。一方101TOKYOは、アートフェア東京と比較すると規模において見劣りすることは否めない。しかしこれは単純に、フェアの参加ギャラリー数が少ないこと、および取り扱うアートジャンルが現代アートに限定されているためであろう。逆に会場全体のブランディングについて言えば、101TOKYOは白と青を基調にした会場設営がなされ、統一したイメージを表現できていたように思う(写真3,4参照)。例えて言えば、アートフェア東京は何でもありの百貨店型のフェアであるのに対し、101TOKYOはブランドイメージを前面に出したセレクトショップ型のフェアと言えるかもしれない。

両フェアを通じて特に印象に残った作品については、CREATIONにて述べているのでそちらを参照して欲しい。アートフェア東京にて展示されていた北川宏人の作品である。また、同じアートフェア東京にて出展されていた丸山友紀の動物をモチーフにした諸作品もとても可愛らしかった。琳派を彷彿させるような鮮やかな金色を背景に丁寧な筆使いで描かれた様々な動物達、その鮮やかな色彩が美しい。ブースには若い女性を中心に多くの人だかりが出来ていた(写真5参照)。一方、101TOKYOに展示されていた佐藤雅晴のアニメーション作品「TRAUM」の出来栄えは見事だった(写真6参照)。佐藤はこの作品を4年もの歳月をかけてたった一人で作り上げたそうである。

さて、冒頭の言葉である。これは101TOKYOのトーク・イベント中にあるパネリストが実際に口にされた言葉である。この言葉どおり、多くの日本人にとって「アートを買う」という行為は未だ一般的ではなく、その考えすらないのが現実である。アートフェア東京では、フェア期間中の4月4日に著名な現代アート・コレクターの高橋龍太郎氏を招いてトーク・イベントが行われたが(写真7参照)、同フェアのディレクターである辛美沙氏からこのイベントの来場者に対し、「今回のフェア来場者は既に一万人を突破しましたが、この中で実際に作品を購入された方はいますか?」との質問がなされたとき、手を挙げた人はごくわずかであった。それを見て思わず辛氏が、「皆さん、アートフェアはアートを買う場所ですよ」、と突っ込みを入れたほどである。アートに関心があり、アートを買う場であるアートフェアに来場した人達でさえこのような状況なのであるから、一般の日本人のアートを買うという姿勢については推して知るべしだろう。

このことは数値にも如実に表れている。アートフェア東京の昨年の総来場者数は4万人超であったのに対し、総売上は15億円ほどだったらしい。101TOKYOの場合は、総来場者数は約5千人、売上は1億円ほどだったようだ。アートフェアは一年中世界各国で開催されているのだが、有名なスイスのアート・バーゼルの売上は4日間で600億円にも上るらしい。その差は歴然としている。

経済がバブル絶頂期のころ、日本は約1兆円のアート作品を輸入したと言われている。つまり、1兆円分のアート作品を外国から買ったということだ。ただし、その多くは印象派等のいわゆる名画に限られ、購入する主体も法人に限定されていたらしい。経済が落ち込み、いわゆる「失われた10年」の時代になると、メセナをキーワードにした企業によるアート支援活動は潮を引くようになりをひそめ、日本のアート市場は壊滅的な打撃を受けたという。

一方、毎年発表される世界各国の美術館の展覧会の総来場者数の上位1位から3位までは全て日本の美術館の展覧会が占めるという。日本人のアートに対する関心、情熱はいまだに世界一なのである。ただし、その情熱はあくまでアートを「見る」ことに限定されているのが現状だ。

アートを「見る」ものから「買う」ものへ。その転換が今求められているのかもしれない。

両フェアの詳細は下記まで。

アートフェア東京:http://www.artfairtokyo.com/
101TOKYO:http://www.101tokyo.com/jp/index.html


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