07.06.85
ザオ・ウーキー
1985年
油彩/キャンバス
ブリヂストン美術館所蔵
インターネット上より画像転載
パワー
2009年3月29日
キャンバスに大きく広がる濃い青、薄い青、白、灰色、その他の色。特定の形があるわけではなく、一見すると何を表現しているのか見当もつかないような、まさに抽象画の見本のような作品である。しかしこの作品にこそ私は一瞬で目を引きつけられ、しばらく目を離すことができなかった。それだけに留まらず、じっと見つめていると何かが出てきそうな気さえした。
いや、実際にその「何か」が浮かび上がってきたのである。この絵をじっと見続けていると、中央から女性の姿がぼんやりと浮かび上がってくる。彼女は、その顔を左下に向け、両手をY字型に天に向かって大きく広げ、左足を前に、右足を後ろに大きく伸ばしつつ、背中をほんの少し反らしながら立っている。天に向かって大きく広げられた両腕からは翼が垂れ下っているように見える。その両足は、裾の部分が傘のように放射状に広がったドレスに包まれている。彼女は果たして踊っているのだろうか、あるいは歌を歌っているのだろうか、画面いっぱいに彼女のそのエネルギーがうねるように広がって見えてくるのである。
一瞬にして人をひきつけ、その注意を持続させ、見る者の心を動かし、思いをどこかに馳せさせる、そんな力がこの作品にはある。
参照：「名画と出会う」展